『I-Land 戦慄の島』サバイバル物の皮を被ったなんちゃってSFサスペンス ――あらすじ&感想(ネタバレあり)【Netflixオリジナル】

2019年10月9日水曜日

Netflix SF サスペンス ドラマ レビュー

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作品情報




 本作はNetflixオリジナル作品であり、『ヴァン・ヘルシング』シリーズのニール・ラビュートらによるSFサスペンスです。
 作品へのリンクはこちら
 主演は『アンダー・ザ・ドーム』、『SCI:NY』に出演していたナタリー・マルティネスと『ラスベガスをぶっつぶせ』などに出演しているケイト・ボスワース。
 全7話構成のミニドラマシリーズとなっています。

 日本語吹き替え・字幕共に有り。
 吹き替えの質もNetflixオリジナルドラマとしてしっかりとした物になっています。
 字幕もまあまあ。一部ドキュメンタリーみたいな手抜き・明らかな誤訳はありません。

 Netflixでもドキュメンタリーが公開中である大失敗に終わったFyre Festivalを下敷きにしているとも

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あらすじ


 全く見知らぬ島で目が覚めた10人の男女達。自分の名前を含めた記憶すら失っていた彼らは、困惑しながらもそれぞれに島に適応し、謎を解き明かそうと動き、そして自らの衝動を満たすために行動する……









 ここからネタバレ

 主人公の一人である筋骨隆々の女性であるチェイスは、どこか厭世観漂うKCと呼ばれる女性と対立しつつも、他の人々とは違い、島の秘密を解き明かそうと行動する。
 その中で露わとなる、島の異様さ。便利なアイテムが砂の中に埋められていたり、人間の作り上げた標識などが建てられていたり、医療機器や謎のケースなどが積み込まれたボートが漂着したり……

 そんな中、彼女は10人の内の1人から襲われそうになり、反撃した事で他の人々とは一線を置くことに。
 しかし、襲った相手がある日突然殺されていたことから、全てが暗転。
 犯人扱いされたチェイスは、KCを初めとする彼女に不快感を持っている面々から暴行を受け、頭部を強打される。

 気を失った彼女が次に目覚めたのは、近代的な謎の施設の中。
 その中で彼女は、自身が刑務所に閉じ込められている事、そして島での出来事は仮想空間における実験である事、そして島は犯罪者更生プログラムであり、10人は全員が重大な犯罪を犯した犯罪者達である事を知る。
 刑務所の所長や彼女を観察するカウンセラー達と仲違いしつつも、島に戻った彼女は突如として島に現れた所長の手先として投入された二人組と対立しつつ、自らの過去と犯した罪を知るべく、調査を続けていく。

 そんな中で、実験に介入を始めた所長の手によって記憶を取り戻していく犯罪者達。
 その中でもKCは、自らの子を殺めて自殺未遂を犯したという壮絶な物を思い出す。
 記憶を取り戻した彼女は島から脱出するために、その鍵を握っているチェイスに接触すべく動き出す。

 一方、チェイスもまた、自らの過去を取り戻していく。
 そしてその過程で、夫と再開し、過去を取り戻した彼女はKCと対立。
 しかし、そこで起きたトラブルが原因で所長の手先二人と交戦している最中、彼女は再び実験から引き上げられる事に。

 夫が二人の生活の為にチェイスの母を殺害したという犯行を自白し、彼女の無実が証明された為。
 実験に介入していた所長はその事実が明らかになる前にチェイスを消そうと奔走するも、それも敵わず、直接手を下そうとした所を抑えられ、拘束される。

 無事に釈放されると思われたチェイスであったが、驚愕の事実をカウンセラーから告げられる。
 彼女は死刑囚であり、収監から25年が経っていたというのだ。
 薬剤を投入されたとたん、老いていく彼女。今までドラマに映し出されていた彼女もまた、島でのアバター、収監当時の年齢の物でしかなかったのだ。

 彼女は200ドルとバスのチケットだけを渡され、近未来世界に突如として追い出される。そこは海面上昇によって街のすぐ近くにまで海が迫っている荒れ果てた世界。
 そして、チェイス達を始めとする犯罪者と同じ条件で島に送り込まれた所長が、KCたちに武器を向けられるシーンで物語は終わる。

感想


 宣伝と見せ方が悪い作品というのが第一印象。
 フェスティバル要素なんてどこにも無いし、最初から10人ともまともに楽しむ暇も無く喧嘩しまくってるし、あっという間に血みどろになるし……

 はっきり言って本作において島とサバイバル要素は味付け以下で、本筋はチェイスとKCを中心とした登場人物達の犯した罪と過去に関する話なんですが、それが明らかになるまでの話のフックが非常に弱い。

 舞台となる島の違和感と、いきなり大量に出てきて、落ち着かないままに派手な喧嘩を始める登場人物達に翻弄されて視聴を止めてしまう人がかなり多いのではないでしょうか。
 面白みを感じる前に、癖の強すぎる登場人物とよく分からなさに戸惑うことの方がしばしば。
 
 特にKCを筆頭として、登場人物がかなり性格悪めであったり、暴走しがちな事にもしっかりと理由が描かれており、それが分かると腑に落ちるし納得も出来るのですが、そこに行き着くまではただ不快で嫌味なキャラとしか思えないのが非常にマイナスです。

 ただ、癖の強いキャラの中でも一際異彩を放っているのが、刑務所の所長。
 舞台であるテキサス州のおっさんそのまんまというマッチョ気取りの小太りなおじさんが、もう出てくる度に大騒ぎ。
 吹き替えの質も良くて、最終話の丁々発止のやり取りは思わず笑ってしまいました。

 そんな彼が出てくるという事もありますが、犯罪者達に対する実験というネタバラシがされる三話以降がぐっと面白くなっていくので、ここが非常に残念な所。
 また、登場人物があまりにも多すぎて(わりかし早く減っていきますが)主人公であるチェイスの過去がそこまで深く描かれないのももったいない。
 結局犯した罪は夫のものでしたーというオチもうーん。

 最終話で描かれる社会情勢も、別にここまで引っ張る必要はなかったのでは? とも。

 なんとも、Netflixオリジナル作品らしい、光るものはあるのにそれを活かしきれていないタイプの作品でした。

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