『薄氷』 あらすじ&感想(ネタバレあり)【Netflixオリジナル】

2021年2月11日木曜日

Netflix サスペンス シリアス 映画 劇場未公開 社会派

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作品情報


 簡単な背景解説

  今回紹介するのは、Netflixオリジナル映画である『薄氷』です。



 監督は42歳のLluis Quilez。短編映画などを中心にキャリアを重ねてきた監督のようですね。本作以外の長編映画監督経験は1本のみとフレッシュな印象が伺えます。

 

 作品へのリンクはこちら(要Netflixアカウント)から。


 日本語吹き替えは無し、字幕のみの作品です。


 原題は『bajocero』、氷点下の意味ですね。

 これは薄氷という邦訳が上手い! 物語の最期である決断を下す事となるマーティンの理性、論理感、極限状態に陥れられた囚人たちの命や、ラストで印象的な役目を果たす凍りついた湖など、様々な意味を内包した物となっています。


 制作スタッフ

 主人公のマーティンのキャストは『マーシュランド』のフアン役や『オリーブの樹は呼んでいる』のアーティチョーク役を努めたハビエル・グティエレス

 やはり有名なのはフアンでしょう。どこか『マーシュランド』のような香りが漂うのも、彼の名演あっての物です。


 一方、マーティンと相対するミゲル役を務めるのはカラ・エレハルデ。

 『オチョ・アペリードス・バスコス』でゴヤ賞を受賞した超実力派。渋い演技を見せてくれます。


 作品の影響

 なんと本作、2月2日の時点でアメリカ、フランス、ドイツなど55カ国で視聴者数トップに躍り出た事があるんです。

 スペイン映画という少しマイナーな物を、国境も関係なく見られるというのは実にいい時代だなと…

 




あらすじ


 舞台は雨の中、ある男が若い男を拷問している所から始まる。

 次に、警察官であるマーティンがモンテシノスという別の警察官と組んで囚人輸送の任務を受けることに。


 泥棒のラミスや軽犯罪者のナノと言った男たち6人を護送するマーティンであったが、護衛のパトカーが姿を消す。その直後、何者かが道路上に設置したスパイクトラップに引っかかり、護送車がパンク。立ち往生してしまう。様子を伺いに行くモンテシノスも何者かに銃撃され、マーティンも銃撃を受けて命からがらの状態で護送車に戻る。

 激しい銃撃を受け、護送車内部に閉じこもるマーティンであったが、外側から鍵を掛けられてしまった。


 謎の襲撃者であったミゲルはナノの知人であり、彼の要求はナノを引き渡す事。だが、彼が護送車の扉の鍵を飲み込んでしまい、内側からは開けられない状態に。それを知ったミゲルは、護送車を奪いどこかへと運転していってしまう。

 一方、襲撃を受けて失神していたモンテシノスは、犯人の乗り捨てた車に乗り、護送車を追跡する。だが、カーチェイスの結果帰らぬ人に。


 そして、夜明けを迎えた所でミゲルは冷酷にも時間切れを囚人達に告げ、護送車を湖の中へと沈める。

 浸水した事によって天井の扉から脱出する事に成功したマーティン達。ナノも一緒に脱出した事を見て取ったミゲルは、彼を追いかけて銃撃する。


 舞台は無人の街に移り、そこで襲撃者であるミゲルと対峙したマーティンは彼がなぜ事件を起こしたのかの真相を直接聞くことに。

 ミゲルの娘がナノとチノ(冒頭で拷問されていた男)に暴行された上にどこかに遺体を捨てられた。しかし、未成年故に法によって守られて、娘の遺体がある場所を吐かせる為にこの事件を引き起こしたという事実。


 マーティンとミゲルがもみ合いになり、ミゲルの銃を奪い取るマーティン。形勢不利と見たミゲルはマーティンから逃げ、ナノの元へと急ぐ。

 マーティン達を捜索にきた警察のヘリコプターが到着する中、ナノを激しく殴りつけるミゲル。しかし彼は娘の事を吐かない。マーティンや他の警察が現れ、自分の安全が確保されたと判断した途端、ナノはミゲルを罵倒する。それを見たマルティンは、ミゲルに変わってナノを銃撃。彼にミゲルの娘の遺体の場所を吐かせたのであった。




感想

 作品全体を包む重苦しさ

本作を一言で言い表すなら、やや変化球気味の密室サスペンス、という感じでしょうか。

作品全体に陰鬱な雰囲気が漂う映画です。そういうのが苦手な人はちょっと向かないかも…


 ややスローペースな展開

 あまり登場人物の背景や性質がつかめない事もあり、前半はいまいち乗り切れない印象だったのですが、マーティンが護送車に入る辺りから一気に緊迫感が増し、面白くなっていきます。それからはもう夢中で見てしまいました(笑)


 惜しい登場人物の扱い

 難点としては、結構多かった囚人たちのキャラ立ちがあまり上手くなく、印象に残らない(生き残る事となったラミス程度でしょうか)事でしょうかね。密室物として、ここは少しもったいない部分です。

 ただ、そこは作品の主旨ではないので仕方ないでしょう。犯人であるミゲルにとってナノ以外は目当てではないわけですし。


 オンデマンドならではの楽しみ方を是非

 唐突に開始される冒頭の拷問シーンが何であったのか、というのが判明した時の衝撃はすごかったです。思わず巻き戻して見直してしまいました。


 答えの無い結末、これがスペイン映画か…

 ラストにマーティンが下す決断、それが正しいのか、間違っているのか、それを何も語らないラストはやはり『マーシュランド』を思わせます。


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