『運命の7秒』 あらすじ&ネタバレ 感想【Netflix オリジナルドラマ】

2023年2月27日月曜日

Netflix Netflix独占 クライム サスペンス 海外ドラマ 社会派

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『運命の7秒』の簡単な概要

本作は2018年制作のNetflixオリジナルのドラマシリーズとなっています。
また、1シリーズで完結する事が発表されています。 原題は『Seven Seconds』。邦訳も原題も特に印象は変わらないでしょう。タイトル自体が作品の核心にも触れた要素となっており、そこを変にいじる事がなかったのは好印象です。

全10話で完結し、1話は50分~1時間程度の平均的な海外ドラマの尺です。このあたりは特に変わったところはありませんね。

本作は『THE KILLING ~闇に眠る美少女』の製作総指揮を努めたヴィーナー・サッドが新しく手掛け、『ビール・ストリートの恋人たち』で数々の賞を手にしたレジーナ・キングが主演する、人権問題を題材としたサスペンスドラマです。
『THE KILLING〜闇に眠る美少女』がデンマーク産の『THE KILLING/キリング』のリメイクであったように、本作もロシア映画の『The Major(原題:Майор)』を原作とした作品になっています。
また、課題としている題材が、『The Major』がロシアの軍・警察の腐敗を扱っていたのに対し、本作はアメリカにおける黒人の人権問題を真っ向から捉えています。

余談ですが、本作でレジーナ・キングはエミー賞のミニシリーズ・主演女優賞を獲得しています。しかも本作が公開された同年に『ビール・ストリートの恋人たち』で数々の賞を手にしており、一気にスターダムにのし上がった感がありますね。

『運命の7秒』のあらすじ

警察の麻薬取締官であるピートは、黒人の少年、ブレントン・バトラーを誤って車で撥ねてしまう。
身重の妻を抱えていたピートは対応を、麻薬取締官のチームリーダーであるディアンジェロに任せることに。
子供は重体ではあったが、ディアンジェロは子供が死んだと嘘をピートに伝え、病院に向かうように則した後に証拠を隠滅し始める。

12時間以上雪中に放置された後に発見されたブレントンは意識不明の重体であり、両親であるラトリスセス、そして叔父で軍から退役したばかりのイザヤが病院に駆けつけ、奇跡を祈るも、その祈りは届かず、亡くなってしまう。

一方、ブレントンの事件について調査を開始することとなった女性検察官補佐のKJ・ハーパーだが、彼女はアルコール中毒という問題を抱えていた。
KJに協力することとなったフィッシュもまた家庭環境に問題を抱え、犬だらけの家で孤独に暮らしている。

二人は仲違いしながらも、調査を行っていく。しかし、ディアンジェロが証拠隠滅の為に麻薬中毒者の少女ナディーンに関わり出し、事件は変化を迎える。
ある切っ掛けで彼女に接触したフィッシュは、警戒するナディーンの誤解を解く過程で、SNSに捜査の過程が漏れ出し、ブレントンを轢いたのは警官だという噂が流れ出す。
その事実を知ったディアンジェロは、実は内通していた町の麻薬取引を牛耳っているギャング、メサイアの仲間から情報を聞き出し、ナディーンを口封じしようとするも失敗。ナディーンはフィッシュの元へ。

一方、息子を失ったラトリスとセスの間でも反目が起きる。神に祈る事で難局を乗り切ろうとするセスと、事件の真相を突き止めたいラトリスの間で意見の行き違いが起きる。
それと共に、ブレントンが実はギャングと関係していたのでは、との事実が明らかに。

その一方でラトリスは独自にピートを事件の関係者として追い、彼の住む家に赴き、事件について知っている事を伝えてくれと頼み込む。しかしヤブロンスキの妻であるマリーは彼女を追い返す。
事件後、ピートは人を殺してしまったという事実から逃れるように仕事に没頭。更に、麻薬捜査班が行っている押収物の転売にまで手を付ける。
だが彼をよく思わないのが、同じ麻薬捜査班のオソリオウィルコックスだった。

ディアンジェロはピートとマリーに、町から出てほとぼりが覚めるまで姿を隠すように告げる。
しかしピートは隠れる事を良しとせず、留まる姿勢を見せる。その事でディアンジェロはメサイアと衝突。イザヤを使ってピートを始末しようとするメサイアとあくまで彼を庇おうとするディアンジェロ。
最終的にディアンジェロはメサイアを始末する。

一方、ナディーンの居場所を突き止めたディアンジェロ一行は彼女を拉致し、殺害。重要な証言者を失うと共に、犬を通じてナディーンと友好を深めていたフィッシュは落胆。
さらに警察側に現れた弁護人がブレントンの乗っていた自転車とギャングの関係、ラトリスがピートに対して脅迫めいた事をしていた事を執拗に追求する事と、ディアンジェロが用意した過去のKJの行動の録画によりKJはピートたちを有罪にするどころか、逆に窮地に立たされる事に。

だが、その状況を覆したのは、セスとブレントンの友人カデュースであった。
カデュースはセスに対し、ブレントンの事件の前日に共に過ごしたのは自分であり、自転車も自分の物で、そして彼と関係を持っていた事を告白。
敬虔なキリスト教徒であるセスは衝撃を受け、その事実を受け入れがたい状況になっていたが、ピート達を有罪にするべく証言を行った。

更に、オソリオとウィルコックスはピートの家にアリバイとなりうる事故車の一部が隠しており、マリーの従姉妹がそれを目撃してしまう。
フィッシュが仕掛けた揺さぶりによって従姉妹はそのアリバイを吐いてしまう。

どうにかアリバイ、そしてピート自身の証言の食い違いを利用し、ピートを有罪に持ち込む事が出来たKJとフィッシュ達。
しかし、彼に下された判決は懲役1年程度の軽微な物であった。

遺族であるラトリスやセスだけでなく、弁護人であるKJやフィッシュにも大きな傷を残した事件はこれで終わった。
それぞれが新たな生活を築いていく様子が描かれ、エンド。

『運命の7秒』の感想

最初から最後まで重すぎる展開

  事故シーンから始まる本作では、ブレントンの死によって一つの家庭が崩壊する様と、その一方で新たな家族を迎え入れる加害者家族が対照的に描かれています。
 結論から言えば、起こした事件に見合った裁きが加害者に加えられていない上に、共犯者は最後どうなったんだろ? という物で、最初から最後までとにかく展開が重すぎる上に視聴後の感覚もモヤモヤとした物で終わるという…
 テーマの重さと同じくらい視聴感が重い作品だと感じました。

ブレントン・バトラーという存在の描き方

  本作の秀逸な点は、被害者であるブレントン・バトラーをほとんど描かない事でしょう。
 彼が出演するのは、冒頭の事故シーンと病院で入院している姿だけ。それ以外の彼のことは、当事者達の言葉によって描かれていきます。
 要は最初から最後まで、彼の本当の姿は明確に提示されないのです。

 加害者達が繰り返し言う様に、本当に悪い連中との付き合いがあったのか? それとも母ラトリスの言葉通り無垢な少年であったのか? 
 直接的に描かれないというのに、見ている側も彼の生涯や存在について思いを馳せずにはいられません。

加害者側の描き方の煮えきらなさ

  言ってしまうと、当事者であるピート以外の警察官達への描き方が、だいぶ腑に落ちない物でした。
 その典型がディアンジェロで、ギャングと裏で手を結ぶ悪徳警官でありながら、自身の問題からかピートには異様に気を回し、かつ罪から結局逃れるという、本作の煮えきらなさを一身に背負ったような存在です。
 後は警察側の弁護人ですね。ちょっとあまりにも憎たらしく描きすぎで可愛そうなほどでした。

アメリカ社会の問題

  本作では人種問題が焦点となっている作品なのですが、そこと相対するピート達の境遇も興味深い物でした。
  まずピートはポーランド系であり、父から虐待を受けていた事は明言されていますし、オソリオは中南米系である事から作中でもその点で同僚に罵られたりと、立場の危うい者が、更に弱い立場の者を攻撃している、という構図が明らかとなっています。
  ピートの境遇を描きすぎている事が本作の煮えきらなさに繋がっている面もあるのでなんとも言えない部分ですが、ここもアメリカ社会の問題を描いた点としては興味深かったです。

あまりにも煮え切らないラスト

  それだけに、ピートの背後で暗躍するディアンジェロ、そしてオソリオとウィルコックスが最後突然フェードアウトしたのが腑に落ちませんでした。
 おそらく1シーズンで纏める気が無かったのかな? とも思うのですが、ブレントンの事件はしっかりと完結しているだけに、本当にモヤモヤとした物が残る作品です。
 ブレントンの両親周りの話が良かっただけに、犯人である警察側の話がちょっと中途半端だった、という部分がもったいない作品です。

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